その日のまえに

実際の事や想像の中の事や日々の事など何でも書いてます

老人と猫

 

なぜかバイト先に向かうとき

いつも同じ道ばかり選んでしまう

 

(たまには違う道も行ってみよう)

 

そう思ってちょっと遠回りして

向かうことにした

 

時間は23時前

もう外はすっかり静かで

歩いている人も全然いない

 

そこに

反対側の歩道を

とぼとぼと

歩いているお爺さんがいる

 

こんな時間に1人で

一体どこに向かって

いるのだろうか

 

よく見ると

その脇を黒猫が一緒に歩いていて

おじいさんもなんとなく

優しい表情をしている様に見える

 

近くに十字路があるから

そこで待ち合わせを

しているのだろうか

 

猫と老人が

会話もせず

ただ歩くだけ

 

その光景が

なんだか今日は

目に留まった

 

時間は朝8時

朝番の人に引き継ぎをして

家に向かう

 

(帰りもあの十字路を通って帰ろう)

そう昨日のうちに決めていたので

少し遠回りだけど十字路に向かった

 

十字路に向かう途中

ある看板が目についた

「そば屋はじめました。」

 

昔流行った

冷やし中華はじめました。」

みたいで

なんだかおかしくて

少しほほがゆるむ

 

お店の外には

メニューがわかるものがなく

どんな蕎麦が出てくるのか

なんともミステリアスなそば屋だ

 

すると後ろから

自転車を並走して

元気におしゃべりしている

おばちゃん2人組みが来た

 

「〇〇さん、ここのおそば屋さん知ってる?この前食べに来たんだけど美味しかったのよー。」

 

(おばちゃんありがとう

それはいい事聞いた)

 

「でも何おそば食べたか忘れちゃったのよね。もう歳かしら。やだやだ。」

 

(おばちゃん肝心なとこ、、)

 

そう言っておばちゃん2人組みは

ぐんぐん先を行ってしまった

 

(凄いエネルギッシュな

おばちゃんたちだったなあ)

 

おばちゃんたちに続いて

私もおそば屋さんを後にした

 

それにしても

違う道を行くだけで

新しい発見が多い

 

たとえば

 

「謎の集会が行われている公園」

 

「おそらく小学生くらいの子が

作ったであろう秘密基地」

 

「昔のカンフー映画

出てきそうなお爺さん」

 

ワクワクするようなものが

いっぱいあって面白い

 

そんな風に

周りを観察しながら

歩いていたら

あっという間に

あの十字路まで来ていた

 

すると細い路地から

一匹の猫が出てきた

 

トコトコと

私のすぐそばまで

歩いてくる

 

夜勤明けで疲れている私には

見るだけで最高の癒しだ

 

バイバイをして帰ろうとすると

その猫が悲しげな表情したので

(勝手にそう見えただけかもしれない)

 

「一緒にそこまで歩こうか」

と先の信号を私が指差して

一緒に信号まで歩くことにした

 

もしかしたら

昨日の老人も

私と同じだったのかもしれない

 

この猫もあの黒猫の

友達だったりして

 

そんな想像していたら

いつのまにか

約束の信号まで来てしまった

 

楽しい時間は

過ぎるのが早くて

少しさみしいが

 

私は猫に

「またね」と

バイバイをした。